とうじ魔とうじによるコラムなど
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まだ若かりしバンド時代、僕はバンドの相棒・横山幸雄が運転するバンドのワゴン車に乗って、よくいろんな所へ出掛けた。コンサート会場へ行く時も、機材の運搬も、たいていその車だった。あれは埼玉県に住む小塚君(仮名)という友達の家へ行った時の事である。確か、小塚君にコンサートで使うマイクスタンドを借りに行ったのだったと記憶している。いつものように僕は助手席で、地図を片手にナビ係だった。
車は東京を抜け、埼玉県の某国道へ。しだいに小塚君の家が近づいていると思われた。というのは、我々は小塚君の家へ行くのはこれが初めて。事前に僕だけが行き方を、ごく簡単に聞いてきたのだった。その国道から先の道順を、小塚君は僕にこう説明したのである。「右手に××飯店という焼肉屋が見えたら、その角を右折。しばらく走ると右手に門が見えてくるから。門が見えたら、その門が家だから」と。
国道を走りながら、僕は運転している横山幸雄に言った。「右側に××飯店が出てきたら、右折」。しばらくして幸雄が前方を指差し「あっ、××飯店あったぞ」、「じゃあ、あそこを右に曲がって」。幸雄は車を右折させると僕に聞いた。「あとは?」。「右手に門が見えたら、そこだって」僕がそう答えると、幸雄は僕を責めた。「バカか、おまえは!門なんて、どの家にもあるだろ。ホラ、あの家だって、この家だって、みんな門があるじゃないか。門がある家だけじゃ、わかる訳ないだろ!もっとちゃんと聞いてこいよ!」
僕は幸雄に怒られ、シュンとしてうつむいた。「だって…」だって小塚君は、門があるからすぐわかる、って言ったんだもん。でも考えてみれば、確かに幸雄の言う通りだ。門だけじゃ、わかる訳がないのだ。うなだれている僕の耳に、横山幸雄の漏れるような声が、微かに聞こえてきた。「もっ、門だ…」。「えっ?」、僕は顔を上げた。すると、門だ!門だ、門だ、門だ!!右手に、どこまでも続く、門、門、門。本当なのだ。決して一つの門扉に塀がどこまでも続いているのではなく、門扉自体がいくつもいくつも連なっているという、信じられない光景なのだ。幸せの黄色いハンカチが一つ吊るされているか、いないか、恐る恐る顔を上げたら、無数の黄色いハンカチで覆い尽くされていた状態(長い比喩デス)で、ありとあらゆる門扉が並んでいるではないか。僕ら二人は思わず「うお〜」と声を上げた。そして、そこに「小塚ハウジング」という看板も発見した。
なんと小塚君の家は、門扉の展示場だったのである。
車は東京を抜け、埼玉県の某国道へ。しだいに小塚君の家が近づいていると思われた。というのは、我々は小塚君の家へ行くのはこれが初めて。事前に僕だけが行き方を、ごく簡単に聞いてきたのだった。その国道から先の道順を、小塚君は僕にこう説明したのである。「右手に××飯店という焼肉屋が見えたら、その角を右折。しばらく走ると右手に門が見えてくるから。門が見えたら、その門が家だから」と。
国道を走りながら、僕は運転している横山幸雄に言った。「右側に××飯店が出てきたら、右折」。しばらくして幸雄が前方を指差し「あっ、××飯店あったぞ」、「じゃあ、あそこを右に曲がって」。幸雄は車を右折させると僕に聞いた。「あとは?」。「右手に門が見えたら、そこだって」僕がそう答えると、幸雄は僕を責めた。「バカか、おまえは!門なんて、どの家にもあるだろ。ホラ、あの家だって、この家だって、みんな門があるじゃないか。門がある家だけじゃ、わかる訳ないだろ!もっとちゃんと聞いてこいよ!」
僕は幸雄に怒られ、シュンとしてうつむいた。「だって…」だって小塚君は、門があるからすぐわかる、って言ったんだもん。でも考えてみれば、確かに幸雄の言う通りだ。門だけじゃ、わかる訳がないのだ。うなだれている僕の耳に、横山幸雄の漏れるような声が、微かに聞こえてきた。「もっ、門だ…」。「えっ?」、僕は顔を上げた。すると、門だ!門だ、門だ、門だ!!右手に、どこまでも続く、門、門、門。本当なのだ。決して一つの門扉に塀がどこまでも続いているのではなく、門扉自体がいくつもいくつも連なっているという、信じられない光景なのだ。幸せの黄色いハンカチが一つ吊るされているか、いないか、恐る恐る顔を上げたら、無数の黄色いハンカチで覆い尽くされていた状態(長い比喩デス)で、ありとあらゆる門扉が並んでいるではないか。僕ら二人は思わず「うお〜」と声を上げた。そして、そこに「小塚ハウジング」という看板も発見した。
なんと小塚君の家は、門扉の展示場だったのである。
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プロフィール
“目で見る音”をコンセプトに、楽器以外の日用品を使い独自のサウンド・パフォーマンスを行う傍ら、コラムの執筆、テレビ・ラジオ出演、講演会、プロデュース他、幅広く活動する特殊音楽家。1987年「たま」の知久寿焼、石川浩司らと「とうじ魔とうじバンド」を結成、ポップ幻想歌謡集『移動式女子高生』を発表。1989年、美術家の松本秋則、舞踏家の村田青朔とのユニット「文殊の知恵熱」を結成。互いのジャンルを超え、さまざまな発想と仕掛けで五感を刺激するパフォーマンスを展開中。
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